運動生理学

『つま先接地』が招く誤解を『3つに整理』

お疲れ様です。しましまです。

 

今回のテーマは『接地』です。

近年、ランニングブームの影響か、国内のレースにも海外選手が多く参加するようになったことを起因してか、日本人と海外選手の「接地の違い」がよく取り上げられます。

私が今回整理したいのは、この「接地を意識する=パフォーマンス向上につながる」という風潮にある状況。

確かに、「結果として」接地は重要です。海外のトップランナーの多くと、日本人とで接地に違いがあることは事実です。

しかし、それは「接地を意識すべき」という部分につながるのか?、そういった意識は本当にパフォーマンス向上につながるのでしょうか?

順に整理していきたいと思います。

 

 

大前提:『つま先接地』は忘れよう

トップランナーの接地を説明する上でよく使われる表現が「つま先接地」。

正確に言えば、歩くときも走るときも「つま先」で接地することはありません。仮に、速く走れるようつま先で接地して走ってくださいと言われたとして、実際に走ってみるとまずほとんどの方が「つま先」で接地することは無いでしょう。

それこそバレリーナの方などは手足を長く見せるために「つま先」で立ったりします。本当の意味での「つま先接地」とはそのような動きのことを指すべきです。

 

 

『接地』の違い

次に、接地という動きを理解する上で、様々な接地の仕方について考えていきましょう。

 

①かかと接地

日本人の中長距離ランナーの多くがかかと、もしくは次に挙げるミドルフットでの接地を行っています。

それはそもそも普段そういう歩き方をしているからことが大きいでしょう。多くの方がこれまでの人生において「背筋を伸ばして歩く」ことを言われてきたかと思います。

背筋を伸ばして歩くということは、重心は自然と後ろになります。そして重心が後ろにある体を支えるためには、かかとで接地して歩くしかありません。

こういった「習慣」が身に付いているのです。

 

②ミドルフット接地

ちょうど母趾球とかかとの間のあたりで接地することを言います。かかとでの接地よりもスムーズに体重移動を行うことができ、次に紹介するフォアフット接地ほど筋力が要求される動きでもないので、走りのロスを減らしたいという方が考えてみるべきアプローチの1つと言えるかもしれません。

 

③フォアフット接地

フォアフットとはそのまま日本語で「前足部」のこと。母趾球のあたりと表現されることが多いでしょう。

このフォアフットでの接地と、つま先の接地とで何が違うのかと言えば、1つは接地時の足の角度。

「つま先」ということに意識があると、足が地面に対して斜めに入りがちになります。斜めに入ってしまうと、接地したときに地面からもらう「力のベクトル」が進行方向と反対に作用するため、速く走るがために接地を変えたつもりが、逆にブレーキになってしまうのです。

一方、フォアフットでの接地という意識ならば、地面に対して斜めの角度で接地する必要はありません。地面に対してほぼ垂直の角度で入ったとしても、フォアフットで接地することは可能です。

このフォアフットでの接地は、接地時間が結果的に短くなることになり、体重移動の時間を省くことができるので、効率的な「アプローチ」の1つと考えられています。

 

 

「接地で」タイムは変わらない

さて、接地の仕方について整理したところで本題に戻ります。本当に「接地の意識」がパフォーマンス向上につながるのでしょうか。

ここで運動における大事な要素を1つ紹介しましょう。それは「連動性」というものです。

野球を例に挙げましょう。打者はバットを振るとき、上半身と下半身の動きに「連動性」が無ければインパクトの瞬間に最大限の力を加えることはできません。

投手も同じく、動きに連動性が無ければリリースの瞬間に大きな力を加えることはできません。

ランニングにおいては、足の裏のどこから地面に着くべきか(どこで接地すべきか)ではなく、「どういった形で接地できているか」まで(接地までの「連動性」)を考える必要があります。

どれだけフォアフット接地が良いと言われても、接地の意識だけが先走りそこまでの動きと噛み合っていなければ、力が逃げてしまい余計に不要なエネルギーを使うことになります。

中長距離選手のパフォーマンスに大きく左右するものとして、『ランニングエコノミー』というものがよく取り上げられていますが、このランニングエコノミーを改善するためにも、「動作の連動性」を意識することが重要なのです。

 

 

自分に合った走り方を実現しよう

結局は、全てのランナーが「こうすべき」という接地は有り得ません。

私の個人的な考えとしては、フォアフット接地(につながる動きを身に付けること)はタイム向上を目指す上で理にかなっていると思っており、「事実として」海外のトップランナーは確かにフォアフット接地であることが多いですが、それは今すぐ皆さんがフォアフット接地にすべきということにはならないでしょう。

誤ったアプローチの仕方や筋力が不足している状況で取り組むと、むしろ故障などに繋がる可能性が高まります。

「今」の段階で、皆さんが取り組むべきは何かということを整理して、より効率的なパフォーマンス向上を目指しましょう。

 

 

では、今回はここまでです。